われわれにとって万博とはなにか／針生一郎／1969年　◆大阪万博 EXPO'70

われわれにとって万博とはなにか／針生一郎 編／田畑書店／1969年1刷
ソフトカバー／330ページ

大変古いものですので経年劣化はありますが、中身が読めない程の大きなダメージはありません。
カバー付き、帯無し。
カバー／折り返し部分が切れて離れかけています、今は繋がっていますが保管中に外れるかもしれません（写真参照）、スレ、キズ、ヨゴレ、縁のイタミ、背表紙の焼け。
小口／シミ強、茶変色。
本体／遊び紙等のヨゴレ。蔵書印有り。ページの経年のシミ・茶変色。書き込み傍線は無いようですが、見落としがあるかもしれません、その場合はご容赦ください。

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（カバー返し部分の文）
1970年に、大阪の千里丘陵で、「アジアで最初の」万国博がひらかれる。そのことはだれでも知っているが、この巨大な祭典が何をめざし、どんなしくみで準備をされ、わたしたちの生活にどんなかかわりをもつかは、いっこう明らかでない。万国博の計画や準備にかかわっている人びとすら、尨大な機構の一部に組み込まれているだけで、全体をみわたすことはむずかしい状態にある。そこでまず、日本万国博の実態を明らかにし、ここにふくまれている問題を多くの人びとにつたえようというのが、本書を編纂した動機である。
わたし自身は、おびただしい資料を調べ、何人かの関係者に会って話をきくうちに、何度か嘆息せざるをえなかった。この万国博は目的もあいまいなら計画もずさんで、その上政府、独占資本、大阪府、大阪市などの思惑もばらばらだから、いたるところで破綻をさらけだしている。だが、そのことなら断片的にしろ、新聞その他にも報道されているから、一般に知られているだろう。私が嘆息したのは、これらの支離滅裂な策動が、それなりに体制の意志にあやつられていて、まさに無理想、無計画ともみえる混乱のうちに、いつのまにか「国家総動員」というべき、強固な文化支配の構造が、うかびあがっていることである。万国博には政治、経済、科学技術、芸術など、現代日本のあらゆる問題が縮図のようにふくまれている。その会期が1,970年にさだめられたのは、明らかに安保反対闘争への対抗策としてだとしても、万国博の問題点はたんに政治的な役割につきるものではない。むしろ、70年代全般にむけての体制支配構造の再編プログラムとして万国博はみのがせない「文化論的」な意味をもっている。わたしたちが本書をとおして、究明しようとしたのは、このようにさまざまの側面を持つ万国博の全体像である。ところで、今年になって、万国博批判の声が高まるとともに、万国博へのちょうちんもち的擁護論もめだつようになった。……かれらはみずからのうしろめたさをかくして、万国博批判をことさら矮小化してみせる一方、日本万国博の特殊性を捨象して万国博一般や「情報社会」「感覚の革命」「政治からの自立」などのキャッチ･フレーズに逃げ込もうとする。そのことによって、かれら自身のなかのタテマエとホンネが、いっそう弥縫しがたい分裂をさらけだすのだ。……万国博に関係する多くの芸術家の自己合理化の論は、体制内に組み込まれるかぎり、一切の制作活動を拒否するという素朴な論理に対抗しえない。だが、この地点をくぐり抜けた上であくまで作品を作りながら体制内統合を拒否しつづける、もうひとつの論理が樹立されなければならない。この本は、そういう論理を確立するための、試論の意味ももっている。

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在庫番号［Erica41］